「たったひとりのバグベアさえ、幸せにしてやれない」
気がつくと己の無力感が、言葉になってこぼれていた。
「だれかが幸せにしてやるんじゃないよ、そういうのは」
答えのない問いを追い回すことのナンセンスさと、徒労感。そんなもの、わかってるはずなのに。
「だれかが不幸になってるのを知りながら、自分だけ幸せになんて、なれるものなのかな」
私の独り言のような問いかけに、ベリチェは返答を迷う。だれかが、不幸になってるのを、知りながら、自分だけ、幸せになんて、なれるものなのかなって、自分の口をついた言葉の意味を、自分でも確かめた。
「幸せでも不幸でもないんだよ、私たち」
独
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